《全部先生のせい》
※10年後設定

夕方のオフィス街を俺は慌しく走っていた。
暖かくなって来たのでジャケットの釦は外しているが、風が強く裾がはためいて走るには邪魔だ。
風向きにより右に左に振れるネクタイを緩め目的地へと急ぐ。

(久し振りに定時で上がれるかと思ったのに!!)

大学を出て入った会社はありふれた企業で仕事はさほど難しくはなかったけれど人間関係に多少問題があった。
今日も退社しようとすれば課長が声を掛けて来る。

『一条君、今夜こそ呑みに行こうよ〜今度は二人だけでさ。美味しいもの食べに行こう?』

何を勘違いしているのかこの人は良く俺を誘って二人きりになろうとする。
居酒屋で大勢で飲んでいる時もベタベタと触られるので正直余り得意ではない。

『あ、すみません!今日はちょっと人と約束があって!』
『えー?約束って恋人?どんな子と付き合ってるの?』

まだ素面の筈なのに後ろから肩を抱いて絡んでくる課長をどうやって引き離そうかと苦戦していたら同僚の女の子たちが騒ぎ出した。

『やーだー!課長、一条君が可愛いからって!でもそれセクハラですよぉー!!』

『キャハハ!』と数人で笑ってくれたからかどうにかその場を切り抜けて今、あの人の待つホテルへ向かっている。

(あー…間に合うかな?)

『たまにはいいだろ?ホテルのレストラン予約しとくよ』

そう言ったあの人は何故かとても上機嫌で珍しくウキウキしているのが俺にも分かった。
季節は春。
俺の勤める会社にも新入社員が入って来たばかりで入社三年になる俺は初めての教育係まで仰せつかって急に忙しさを感じている所だ。
あの人の事だから俺が煮詰まらない内にガス抜き、っていうのも兼ねているとは思うけれど。

(それだけにしては…なんか楽しそうなんだよな…?)

色々考えながらも脚を動かし何とか約束の時間ギリギリにホテルのラウンジに着いた。
静かにクラシック音楽の流れる中、さっと人影を見渡す。

(あ!いた!!)

案の定『あの人』は沢山の人に紛れることなく、自分はここにいる、とでも言うように柔らかな光を纏い俺の目に飛び込んできた。

「しつ…か、和虎さん!」
「唯。早かったね」

やはり出会った頃と変わらず柔らかく微笑むと綺麗な指の大きな手を軽く挙げ、俺を迎えてくれた。
待ち合わせの相手は課長の予想通り、俺の恋人。
高校時代の恩師でもある、執間和虎先生。
卒業してからは努めて公共の場では慣れ親しんだ『執間先生』ではなく名前で『和虎さん』と呼ぶ様にしている。
でも正直なかなか慣れない。
今だってうっかり『執間先生!』と呼び掛けてしまう所だった。
つまり家では殆ど昔と変わらず『執間先生』と呼んでいる。

「もしかしなくても走って来た?」
「え!?…あ、はい」

俺の乱れた髪を手櫛で梳きながら執間先生は優しい表情で俺の顔を覗き込む。

「レストランの予約時間ならまだ少しあったのに」
「でも…待ち合わせとか久し振りだから、何だかドキドキしちゃって!」

『実は凄く楽しみにしてたんです!』とラウンジから死角な事を確認して先生の腕に絡み付いた。
執間先生は一瞬驚いた様に目を瞠ったけど懐いた俺に気圧される事など無くサラリと前髪を掻き分けるとちゅっと鼻先に口付けてさえ来た。
目を瞠るのは今度は俺の方でついでに心臓の血の殆どが頬に集まって来てしまう。

「ふふ…この位でまだそんなに紅くなっちゃうの?本当に可愛い」
「もー…一応公共の場所ですよ?」
「ディープじゃないし、そもそも唇じゃないし、構わないでしょ」
「…」

全くこの人には幾つになっても敵わない。
そんな風にじゃれ合いつつもウェイティングバーにやって来た。

(やっぱりまだこういう高級で大人っぽい場所は慣れないなぁ…)

ついキョロキョロしてしまう自分にはっとしながら何を飲むか聞かれた答えを探す。
そこでやっと執間先生がいつもよりお洒落している事に気が付いた。
スーツは黒のシンプルな物だがシャツが随分ドレッシーだ。
イブニングシャツというヤツだろうか。
クローゼットにあるのは知っているけれど冠婚葬祭用で殆ど着る事はないのに。

「…唯?どうかした?」
「え!?あ…な、なんでもありません!」
「そう?疲れてるなら食事はルームサービスにしてもう部屋に行ってもいいんだよ?」
「そんな!!大丈夫です!俺、楽しみにしてたんですから!」
「それならいいけど、無理はしない事。いいね?」

気兼ねする様な仲ではないのにお洒落の事を聞けなかった。

(誰かの結婚式?…はないか。平日だもんな…)

「……唯、もしかして今日俺が誘ったの、理由分かってない?」
「!!え!?ええと、あの…」
「はは、やっぱりか」
「ご、ごめんなさい…」
「ふふ、いいよ。…今日はね、月城の第30代の姫が決まったよ」
「!!」

その一言で、先生の真意を計りかねていた俺にもやっと今日が何の日か分かった。
今日は今も執間先生が勤務する月城学院高等部の入学式の日。
つまり…

「え、じゃあ執間先生と出逢ってもう10年かぁ…」
「そ。10年目の記念日だよ。なのに唯ちゃんには忘れられてたかぁ〜」
「それは…っ!」
「はは、いいよ。新しい仕事が増えて大変そうだったもんな」

恋人としてはかなり薄情な事をしてしまった。
なのに先生は結局変わらない優しさで受け止めてくれる。
そして先生が注文してくれた軽めの食前酒を半分も飲まない内に予約時間になりすんなりとレストラン側へと通された。
そこでの食事は『記念日』と言っていただけあって豪華なもので、緊張するかと思いきやそれを空腹が上回りとても楽しい時間を過ごした。



「はー!お腹いっぱいです…もう食べられましぇん…」
「ははは、勢い良く食べてたもんねえ。いいねぇ、若い胃は…」
「あはは!先生、なんか哀愁漂ってますよ!!」
「…実感が篭ってるの。俺はもうあの量は無理だな」
「やーだー!!せんせぇ、老け込まないで下さいよぉ」

執間先生が押さえてくれていた部屋は、何とダブルで余り見たことの無い大きくて豪華なベッドに俺はテンション高く弾む様に寝転がる。
先生は食事と言うよりお酒メインかな?と思う様な飲み方をしていて、俺も誘われる様に甘めのお酒を何杯か飲んでいた。
なので多少酔っていると言う自覚はある。
甘えた声を出してベッドの端に座る先生の背に撓垂れかかれたのも多分お酒の効果だ。

「ふふ…でも歳を取ったのは確かだよ。唯はもうちゃんと成人して社会人なんだし」
「…そうですね…今ならもう児童ポルノ法には引っかかりませんもんね?」

俺は学生時代に大変だった事を思い出していたのだが先生は小さく息を飲み、何故かこちらを見る目を鋭くして頬に朱の陰が過ぎった様に見えた。

(やば、嫌な事思い出させちゃった!?)

「唯…気が早いね、もう誘ってるの?」
「え、ええ!?なんでそうなるんですか!?」
「確かに昨夜はお預けしたけど、もう待てない?」
「なっ…!!だから違っ!!」
「ふーん?じゃあ今夜の部屋はツインの方が良かったかな?唯も仕事で疲れてる様だし」
「…っ!やです。嫌です!!そんなの!!」
「ふふ…じゃあ先にお風呂入っておいで。ちゃんと準備もしておくんだよ?」
「!!?」

顔を真っ赤にしつつバスルームへ向かおうとすればぽーんと何かを投げられた。
慌ててキャッチするとそれは新品のローションで『新製品』のシールまで貼ってある。

「…っこのエロ教師!!」

精一杯の悪態を吐けばははは、と軽やかな笑い声が広い室内に響く。



(じゅ、準備って…!!準備って!!)

ならば執間先生が驚くくらい完璧な準備をしておこうじゃないか。
先生の想像を上回る様な!!

(…ん?完璧な準備ってどんなのだ??)

決して広くは無いバスルームで髪と身体の泡を流しながら自分の思考に疑問を持つ。

(…えー…あ、全部出して、とか??…いやいや、アレは無理!!そもそもさすがの執間先生でも浣腸まで持ってきてたりは…!!)

バシャバシャとシャワーに打たれたまま考えはどんどん妖しい方に進み、連られてお腹が痛くなりそうな所まで行ってしまい身震いする。

(だ、大丈夫…お腹の調子は凄くイイんだし!!)

今でも時々先生はびっくりする程サディスティックになるけど俺が痛いだけの事はしないし本気で嫌がれば決して無理にはしない。

(つまりこれは…『自分で解せ』って事なんだから…)

バスタブに移りつつそろりとソコを撫でてみる。
何も知らなかった頃に比べれば幾分柔らかだ。
俺の知ってる性的な事は全部執間先生享受の物。

(…ここも先生のカタチだけ憶えて…)

堪らなくなって指先に真新しいローションを纏わせるとソコを撫でながら温いお湯に深く浸かった。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜


(のぼせそう…)

フラフラになってバスルームから出て来れば執間先生は冷えた無味の炭酸水を渡して来る。

「ちょ…俺甘くない炭酸苦手なんですけど…」
「知ってるよ。でも今ならきっといけるよ。騙されたと思って飲んでご覧?」

喉は激しく乾いているので仕方なくキリリとアルミの蓋を開け中身を口に流し込む。
するとそれは意外にもスルスルと喉を潤して行った。

「…美味しい!」
「でしょ?喉が乾いてる時のビールが美味しいのと同じだろうと思ってね」
「えへへ、なんかまたひとつ大人になった感じ?」

おどけた様に言うと二人でくすくす笑い合う。
バスローブのままソファに座る先生の膝に乗った。
そしてどちらからともなく唇を合わせる。
俺だってもう25なのだから少しはリード出来るのだけどいざとなるとどうしても執間先生の器用な舌に甘く噛む歯に薄い唇に、未だに翻弄されてしまうのだ。

「…ん…んぅ…っ…はぁ…」

やっと離れる事を許された時、透明の糸がつうっと繋がれて、膝立ちをしているので珍しく高い位置にある俺の唇からぷつりと切れて先生の顎にぽたりと落ちた。

「はぁ…先生…」
「…唯、プレゼントがあるんだ」

俺の吐息はすっかり熱いのにそう言うとまた鼻先に口付けて何やら大きな箱を取り出す。
綺麗なリボンでラッピングしてあって、また変に高価な物だとすぐに分かった。

「…何ですか?これ…」
「開けてみて」

恐る恐るリボンを解く。
空気抵抗を感じる程大きな蓋を開けると眩しい様な真っ白の綺麗なドレスが現れた。

「…え?先生あの、コレって…」
「ふふ、ドレスだよ」
「それは分かるんですけど…俺に、ですよね??」
「勿論、唯にだよ?サイズも合ってるはずだけど」
「はあ!?サイズって…!?」
「藤吾の知り合いを紹介して貰ってね、オーダーしたんだ」
「…ちょっとあの…オーダー!?どうしてそんな…俺はもう姫じゃな…っ!!」
「いいだろう?10年目の記念なんだし。…じゃあ俺はお風呂入って来るから、上がる迄にちゃんと着ているんだよ?」

ぽんぽん、とまだ湿っている俺の髪を撫でるとたまに出るあのサディスティックな笑みを浮かべ、先生はバスルームに消えてしまった。


☆。.:*・゜☆。.:*・゜ ☆。.:*・゜


「ふぅ…たまにはちゃんとお湯に浸かるのもいいねぇ」

ほかほかと湯気を上げて執間先生が戻って来る。
俺はと言えば散々考えた結果、素肌に例のドレスを纏って待っていた。
先生が嬉しそうに微笑んでこちらにやって来る。

「うん、やっぱり似合うね。サイズも丁度いいかな?」
「…はい」
「おいで」

そう言うと先生は、ひょいと俺を抱き上げた。
さらさらのドレスの生地はとても薄い。
お尻を支えようと手を添えた時に、執間先生なら気付いた筈だ。

「…唯、悪い子だね。履いてないの?」
「……はい…だって、その方がすぐ出来るでしょう?」
「ふふ、自分で解したんだもんな?我慢出来なくなっちゃった?」

少しでも先生を驚かせたくて敢えて下着を着けなかったのに、触れられると抑えていた身体の熱が弾けそうに高まってしまった。
ナカに少しだけ含ませたローションが少しずつ少しずつ、ぷちゅっと音を立てて漏れて来ているのに。
バスローブの時から素肌同士で擦れる太腿には滑りがあって、とても平常心でなどいられない。
それなのに先生は口付けをやめるとプレゼント等と言って、何年振りかの女装を命じて入浴してしまった。

(今まで散々ナントカごっこ、とか、ナントカプレイ、とか、やって来たけど…)

女物の花柄の浴衣を着せられたと思ったらそのままベッドへ運ばれて脱がされたり、『どうしても』と言うから渋々着たチャイナドレスの時も下着は着けさせて貰えなかったり…。
でも最近は女装コスプレみたいな事は殆どなくなっていて、自分ではスーツだって着慣れて来たと思っている。

(ちゃんと『男』になったんだと思ってたんだ)

でもやっぱり。
執間先生に『着なさい』と言われると今でもこんなひらひらのドレスを喜んで着てしまう。

(だって…コレを着れば…抱いて貰える…から…っ)

パブロフの犬と言うの迄は、行っていないと信じたい。
高校生の頃よりは筋肉や骨格が少しはがっしりしているし、顔だって大人の男なんだし…。
もう女の子に見間違われる事が無いのが、その証明だと思う。
身長はあの頃のまま伸びなかったし体重も服のサイズも殆ど変わらないけれど…。

(もし執間先生が俺に『女の子の様な可愛らしさ』を今も求めていたら…)

『セックスの時に女役』と言うだけで、俺にはそんな不安が生まれて来ていた。
執間先生は元々はヘテロだ。
俺だってきっと月城じゃなかったら女の子と恋愛してたと思うけど…初めての本気の恋が、執間先生だったから。
たくさんの女の人を知っている先生と俺は違うんだと思う。
悶々とそんな事を思いながらベッドに座った執間先生に背後から抱き着いた。
項に唇を押し付け小さな痕を付ける。
そのまま口を滑らせて耳を甘噛みした。

執唯

「はぁ…先生…」
「ふふ、えっちなお姫様だね?」
「っは…だって……もう無理です、お預け、長過ぎっ…!」
「はは、あんまり焦らして浮気されちゃっても困るね」
「!そんな!!」
「ん…でもね、唯は男女関係無く惹き付ける魅力があるからね…俺は不安で仕方ないよ」
「!?」

執間先生が不安?
余りにも意外な吐露に俺は動きを止めてしまった。

「唯、どうかし…」
「そんな…だって不安なのは俺ですよ!?」
「唯?」
「だって!だって執間先生は元々女の人が好きでしょう?でも俺はもう可愛くない!!大人、だから…!!」
「唯、落ち着いて。何か誤解してるな」
「何がっ…!!誤解…っ!!」

取り乱しそうな俺を執間先生はふわりと抱き留めた。
温かな胸に包まれて髪を優しく撫でられる。
滲んでいた涙は一粒だけ零れたけれど。

「唯、俺がお前を女の代わりにしてるとでも思ってるの?」
「ぁ…」
「そうじゃないだろう?俺は唯だから好きになった。唯とだから今まで一緒にいられた」
「…でも…じゃあ、えっちの相手としては?俺、ただの男ですよ?」
「ふーん?そんな心配してたんだ?」
「だ、だって…!!」
「なら、証明してあげるよ。俺が唯の内面だけでなく、この身体にどれだけ夢中になっているか…」

混乱状態から落ち着いて来たばかりなのに執間先生に耳元で熱く囁かれて、俺は上等なスプリングのベッドに易々と押し倒されてしまった。

「んんっ…んっふっ!」

さっきのなんかよりもっとずっと長い口付けで裏顎も舌の裏も口の中全部貪られてやっと酸素が入って来たと思ったら、今度はドレスのスカートを口一杯に咥えさせられた。

「唯の乳首、もう男のものじゃないみたいだね…ぷっくり腫れてて…感度も良くて」
「んぅーっ!」

さっきから先生はいちいち俺の身体を解説しながら触って来る。
やっとお預けが解かれて嬉しくて気持ち良いけど、恥ずかしくて堪らない。
スカートを咥えてるから何か言葉を発する事も出来なくて。

「もう何度も乳首だけでイっちゃってるもんな?」
「ふぅっ!うー!」
「男の子は射精するからイったかどうか分かり易くていいね」

言いながら両手で胸を揉む様に触っていたかと思うと乳首を両方一遍にきつく摘まれた。

「!?んんーー!!!」

目の前がちかちかして身体を仰け反らし達してしまった。
びくんびくんと波打つまま、枕の端を握り締める。

「ほら、イっちゃった」
「ん…う…」
「ふふ、出したのにかちかちだね?」
「うぅ〜!!」
「ああ、これはもういいかな」

抗議する様に呻くと先生は俺の口からスカートを取ってくれた。
両手は拘束されてた訳じゃないのに自分から外す事は考えられなくなっている。
涎でべとべとになったドレスを先生が脱がしてくれた。

「じゃあ今日は、ここも愛してあげようね」

先生は俺の決して大きくはないペニスをぬるぬると弄る。
先端の尿道を親指でぐりっと潰された。

「あああ!?」

快感と痛みに思わず上体を起こした。
先生の手元を良く見ると小さなビニールでパッケージされた物を持っている。

「はぅ…せんせ?なに?」
「ん?綿棒だよ。唯のおちんちんの中も気持ち良くしてあげる」
「え!?や、やだ!!怖いぃ!!」
「大丈夫、初めてだし少ししか入れないよ。でも危ないからじっとしてて?」

そういうプレイがあるという事を知らない訳じゃない。
執間先生の事も信頼している。
それでもやっぱり怖くて小さく震えながらソコを見ていた。

「…んあ!?」
「いい子だね。ほら綿の部分、もう入っちゃったよ」
「ひゃ、あっ!?ふああぁあ!?や、だめ!!せんせっ!!」

2センチ程入るとくちゅくちゅと上下に動かされた。
『あんな所に入っている』状況が背徳的で、怖かったのが嘘の様に興奮してしまう。

「やぁあ!!」
「おっと、これではイっちゃ駄目」
「あ、そんな…っ」

執間先生は綿棒を抜くとペニスの根元を痛い程きつく握った。
何度かされたことのある、おあずけ。

「ふっぅ…ぅぅぅ…」
「ほら、こっちだってちゃんとしないとね。唯が自分で解したんだし」

俺の射精感が治まったのを見計らって脚を一纏めにして頭の方へ持ってこられた。
丸見えになったお尻を愛おしげに撫でて先生はそこに口を付ける。
ちゅっと音を立てて一旦離れた。

「ふふ、もうぐずぐずなんだね。だらしなくて厭らしくて、凄く可愛い」

先生が喋る吐息がソコに掛かるだけでひくつかせてしまう。
たとえ酷いことを言われたとしても俺はもう魔法に掛かったように先生とセックスしたくて堪らない。

「は、あ…せんせ、せんせの下さい!せんせの!」
「ん?俺の何かな?」
「ぅ…せんせの…しつま、せんせの、おちん、ちん!おれの、おしりにっ!ください!!」
「よく出来ました。でもまだだよ?」

執間先生はサディストの笑みでおでこに優しく口付けるとまた何か道具を手にした。
それは見覚えのある、注射器みたいな形の…

「あ、せんせ、だめ、それ、お腹痛くなる…!」
「大丈夫。これはローションだから。この様子じゃ、焦らしてる間に唯が使ったのは出て来ちゃったみたいだしね」
「う…」
「奥に少しだけ入れるから、お腹の力抜いてるんだよ?」

渋々了承すると注射器の先端に更に管が付いた物がぬるりと中に入って来た。
細いのに冷たく感じるそれは俺の指では届かない所までぐにゅぐにゅと侵入する。
早くそこに先生自身が欲しくて堪らないのにそれだけで腰を跳ねさせてしまった。

「入れるよ」

咥え込んだ管の先からにゅるにゅると温かな物が体内に押し出される。
本来感じられない程度の量しか入れられていない筈なのに出された所が酷く熱く重いと錯覚してしまう。
先生に『力を抜いて』と言われた事も忘れてぷるぷると真っ赤になって震えた。
そして俺がこんな事で感じているのを知ってか知らずか、注射器はあっさりぷつりと音を立てて抜かれる。

「あ…せんせ、せんせ!もういいでしょ!?はやく…」
「うん。よく我慢したね」
「ん…ぇ、あうっ!?」

執間先生は言いながらそこにいきなり指を二本突き入れて来た。
今入れたばかりのローションを掻き混ぜる様にぐちゅぐちゅ音を立てたかと思えば大きく指を開く。

「あぁっ!?やぁぁぁ!!」

やっと先生は入って来てくれたけど、もうそれが指では物足りなくて俺はなりふり構わず声を上げ涙を流して懇願する。

「やだ!やらぁ!せんせの、おっきの、じゃなきゃ!やぁぁ…!」
「しょうがない子だね…ちょっとローション馴染ませただけだろ?」

駄々をこねる俺に眉を垂れて困った顔をすると口付けをくれる。
その感触に気を取られた瞬間。

「ふぁあああ!?」

遂に愛しくて愛しくて仕方ない人と繋がれた。
その快感は驚く程でぷしっと溜まっていたカウパーを吹いてしまったし、見えないけれど今は先端からとろとろと精液を垂れてしまっているだろう。
達したのか達していないのかも良く分からない。
ただ気持ち良くて俺はもっともっとと先生の背に脚を絡めた。

「せんせ、せんせ…すき…せんせ、んぁあ!!」
「唯…ナカでイってご覧。ほら、ここ好きでしょ?」
「やら、まだいきたくな…もっと…ずっとしてたいのぉ…!」
「ふふ…じゃあ、唯がイってもずっと突いててあげるよ」
「ふぁ!あんっ!うれしっ、せんせだいすき…っ!!」


☆。.:*・゜☆。.:*・゜☆。.:*・゜



翌朝起きると俺の声はすっかり枯れていてベッドのシーツは驚く程縒れて湿っていた。

(…我ながらよくこの状態のベッドで眠れたな…)

ホテルの人に何事かと思われるのが恥ずかしくてひとりせっせとベッドを直す。

「唯、これで自分の身体にも自信が持てた?」
「!?げほっ!ごほっ!」
「まあ昨夜はやたら乱れてたけど結局は気を失っちゃってたね」

バスルームから戻って来た執間先生はアラフォーとは思えないつやつやした肌でご機嫌だ。

「でも俺がもし唯と同じ会社に勤めてたらこんな可愛い子放っておかないけどなぁ?個人的に食事とか飲みに誘っちゃうよ」
「…ぁ、そういう人はいますね…けほっ…」
「!?なに?個人的に何かされてるの!?」
「え、飲みに行こうとか…ご飯行こうとか?」
「…身体触られたり?」
「そーなんですよ!!あの課長何のつもりなんでしょうね?」
「唯ちゃん、今夜もお仕置き確定かな」
「ええ!?なんでですか!?」

太陽が目にとても眩しい、そんな朝だった…。





文:飯山シン  絵:凪

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俺プリ10年後のイベントに執間先生がいなかったので
なんでいないんじゃーい!な気持ちを込めて描いた10年後執唯。
ただ他のルートで出てきた10年後の先生がまったく変わってなくて
それより前に描いていたので若干大人っぽすぎるんだけど…
がんばって大人っぽく描いたと言うに。

それをいきなり押しつけ「なんか書いてください」と…(いつもの感じ)
この絵一枚でこんな素敵な(どえろい)執唯を書いてくださいました(*´▽`*)
ありがとうございます!唯ちゃん大胆すぎるけど先生は大人の余裕でリードしまくってて
やっぱええのうこの二人…


20161008